これまで、杉本氏の作品を発表する場と
なった建築とその建築家についての
いろいろな思いやエピソード、そして
各名美術館の杉本氏による採点表が
付いています。
ミース・ファンデルローエの
ニュー・ナショナルギャラリー、
谷口吉生氏の
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、
SANAAの
金沢21世紀美術館、
ピーター・ズントーの
ブレゲンツ美術館、など
有名な建築ばかりな中で、
私が一番じっくり、じんわり
しながら読んだのは
数寄屋を現代の手法で「新興数寄屋」
として新たに生み出したとされる
吉田五十八氏の頁でした。
生まれてから、そして命が消える
その瞬間までの人の一生を思うとき、
現代の住まいのあり方は、果たして
豊かと言えるのでしょうか・・
機能的で便利で先進的な設備、
傷はなく均一だけれど
無機質な素材・・・
暑さ、寒さ、喜び、悲しみ・・
感情も感覚も溢れる、まさに
「生きている」「ひと」の
暮らしには
ひとの作業が生み出す美しい不揃いや、
自然の味が生かされている空間こそが
幸せに過ごせる空間になるのだと、
あらためて感じました。